西城家の花





言葉を発した敦司をぎろりと睨んだ男は詰め寄ってきて、美桜に向かってびしっと指差した






「こいつは見ての通り、誰もが振り向くレベルの容姿の持ち主だ。だからこいつの外見に騙される奴が大多数だ。しかしこいつの本性は性悪でとてもじゃないがお前らが思ってるような女じゃ、いだだだだだ!!」






悲痛の叫びを発している男に指された指を上に反らすように掴んだ美桜は眉を吊り上げさせながら反論をする






「わたしを酷評して、何が目的ですか。与一」





「あだだだだ、ほら見ろ!!これがこいつの本性だ。いだい!!」






涙目でそんなこと言われても、そもそもお前が余計な事言わなければ彼女はそんなことしないのではと内心思っていた敦司はまた言い争いを始めた二人の様子を窺っていた





確かに今日の美桜はいつもの彼女とは少しだけ違う感じに少し驚いたが、隣の大志の様子を見るからに大志は既に美桜のこういう一面を承知しているのだろうと判断した敦司は、このままでは埒が明かないと思い、二人の間を割って入った






「それで?君は一体何しにここまで?」






敦司に声をかけられ、美桜と口論していた男が再び敦司を睨んだ






「僕は、お前の目を覚まさせるために、西城大志、お前に決闘を申し込む!!」






敦司に向かって指差しながら決め顔でそう宣言した男に、その場にいた全員(騒動が気になって途中から集まってきた生徒たち)がなんでそうなるんだと心の中でツッコんだ





美桜も男の発言を全く想像してないものだったのか目を見開いて驚いている





わざわざこんなところに忠告しに来ただけではないと察していた敦司だったが、自分を指差してくる男に一つだけ物申したかった






「俺、大志じゃないよ」





「…は?」






すっとんきょな声を出すあたりやはりこの男は敦司のことを『西城大志』だと勘違いしながら話を進めていたらしい





まぁ無理もないかと思いながら、敦司は隣でぼーっとしながらただ突っ立ているだけの本物の『西城大志』に視線を向けた







< 70 / 115 >

この作品をシェア

pagetop