西城家の花
「俺は決して美桜に騙されているわけではない。ありのままの彼女とこれからも隣にいて欲しいから婚約しているのだ」
「大志様…!!」
大志の言葉に感激して涙目になった美桜は、人目を一切気にせずぎゅーっと大志の太い腰にしがみついた
そんな美桜の頭を愛おしそうに撫でる大志の姿から先ほどの威圧的な感じが見る影がないほどほわわんとしたなんだかこしょばい雰囲気が漂っていた
実は美桜と大志のこういう光景もここでは見慣れたもので、将来の仲を約束した彼らがああいう雰囲気を出すことは仕方ないと言えるのだが、なにせ二人とも少し世間知らずのところがあるせいで、ところかまわず容赦なく二人の世界に入ってしまうのだ
敦司は大志の性格を十分理解しているし、今まで女性に興味を示さなかった彼がこのような状態になることを微笑ましく見ることが出来るのだが、他の男は違う
美少女といちゃいちゃしていることに嫉妬している恋人がいない男子生徒の僻みがとにかくすごい
今も舌打ちの嵐が酷いので、今度から大志に愛の言葉を囁くのは時と場所を考えるべきだと教えるべきだなと敦司は思った
敦司の隣で超らぶらぶオーラを振りまく二人に呆気をとられた男は、同じく後ろから舌打ちの嵐を耳にし、我に返っていた
「くっ、まさか美桜の魔性が既にここまで西城大志に浸透していたのは…」
この男も、この男で美桜の言った通りだいぶ頭が弱いらしいと改めて敦司は認識した
とりあえずこのままでは嫉妬に狂った男子生徒たちの舌が擦り切れることを危惧した敦司は、未だに二人の世界の中にいる大志の腕を叩いた
「おい、大志。決闘の申し出を受けたんなら、その決闘内容を聞かなきゃなんねぇだろうが」
「あぁ、そうだったな。すまない」
人前でいちゃいちゃしていたくせにまったく恥じ入る様子もない大志は腰に美桜をくっつけさせたまま、再び男に視線を向けた