西城家の花
「はい、お二人さん。これ以上は話が進まなくなるから。本当に君たち、放っておいたらいつまでも喧嘩してるね」
救世主、というかずっとこの騒動を取り纏めている敦司がまたしても美桜と与一の間に入っていった
本来なら大志がやならければいけない役回りなのだが、なにせ究極的にのんびりとしている性格なので美桜と与一の会話のテンポについていけないどころか、理解しているのかも疑わしい
そこで敦司が大志に成り代わって話を進めているのだが、このままでは本当に埒が明かないので、美桜に提案してみることにした
「美桜ちゃんよ、確かに彼は随分と卑怯だとは思うが、一つだけ正しいことを言っている。この決闘は、美桜ちゃんという一人の女性を賭けた、男同士の真剣な戦いなんだ。だから、美桜ちゃんが大志の代わりにそれを引き受けるということは、大志の顔に泥を塗るようなものなのだよ!!」
「まぁ、わたしったらそのようなことにも気付かず…。よろしいでしょう、この流水美桜、大志様の名誉のためにこの戦いには一切口出しはしません。ですが…さすがに生け花で勝負というのは…」
「そこは大丈夫。はい、これ引いて」
どこからともなくてっぺんに穴が開いた箱を持ち出した敦司は、美桜の前に勧める
「あの…、これは?」
「男同士の戦いを公平にするために、勝敗を決める種目はくじ引きで決めようと思う!!」
「ちょっと待ったーーー!!!」
いきなりわけのわからんことを言い始めた敦司に向かって、与一は声を張り上げた
「お前、確か西城大志の友人だろうが。どうせその中身はやつが得意とする種目ばかりに決まっている」
「そんなことはない。俺はちゃんと君と大志、二人が同等のレベルで戦えるようなものを選んでこの箱の中に入れたんだ。それともなんだい、君はなにか他に提案があるというのか?」
「ぐっ…。そう言われると、あるわけではないのだが…」
「それじゃあ文句は言わないでくれ。ほら、美桜ちゃん、早く引いて引いて」
敦司の勢いに呆気をとられてしまった美桜は、言われるがまま謎の箱の中に手を突っ込み、たくさんある紙切れの中から一枚引く
その様子を誰よりも近くで見ていた大志は、何が起こっているのかさっぱり理解していなかったが、敦司の瞳がものすっごくキラキラしていることから奴がこの状況を楽しんでいるということだけはわかった
そしてもうなにがなんだかわからないがこの騒動を見物していた生徒たちは、美桜が引いた紙に書かれてあったものがなんなのかを固唾を飲んで見守っていた
美桜が引いた紙に示された、大志と与一、二人の決闘種目は――