西城家の花
二人の男が芝生の上で向かい合って対峙していた
一人は大柄の熊みたいな男で、西城の大熊と評されている西城大志と、もう一人は大志よりも一回りも、二回りも小さな、華道火野流本元が次男、火野与一
そんな凸凹な二人の間には神妙な空気が流れていて、その空気を切るようにカードがシュッシュッと切るような音が聞こえてきた
実際に芝生の上に座っている二人の間にはトランプカードがあり、大志が手際よく切っている
一方の与一は、この状況にまったく納得していないのか不貞腐れた表情で片腕を膝におき、頬杖をつく
「…よし、それでは始めるか」
「おい、おかしいだろう。なんで僕がお前と二人でトランプなんかで遊ばなきゃいけないんだ!」
カードを配り終えた大志がゲーム始めの合図をすると、与一の容赦ないツッコみが飛んできた
「与一くんよ、それはないだろう。公正かつ、公平な方法で決めた決闘内容に今さら茶々を入れないでくれよ」
「そうですわ、与一!男ならどんな戦いであっても潔くそれを受け入れるものですわ。大志様の堂々たる姿勢を少しは見習ってくださいまし」
二人の様子を少し離れたところから見物していた敦司と美桜が与一を責め立てると、彼はさらに声を張り上げる
「百歩譲って、決闘内容がカードゲームということは受け入れる。だけど、二人で大富豪なんてやって、何が面白いんだよ!!カードが多すぎて、手の中に納まらないわ!!!」
与一の突っ込みは最もであり、二枚のジョーカーも含めた54枚のカードを二人で分けると、一人当たり27枚手元にあることになり、その枚数を片手ではおろか、両手で掴むことはいささか困難である
しかし常人より手がかなり大きな大志にとってはそんなものどうってことなく、与一の突っ込みをよそに余裕で27枚のカードを手中に納めていた
美桜が敦司に勧められた箱の中から引いた紙に書かれていた決闘内容というのは有名なカードゲームの一種、大富豪であった
というかあの箱の中身は殆どがババ抜きや七並べなどというカードゲームしか書かれていなかったため、どんなに与一が文句を言おうが結局はこのような形になっていたのだ
あのまま放置していたら何れ教師たちが集まってきて少々厄介な面倒事が起きるので、如何にして平和的に騒動を収めるということも敦司たちにとっては重要な事である