西城家の花







今日はずっと西城大志という男を見極めるためにとずっと大志に敵意を向けていたものだから、色々と邪魔してくる美桜を鬱陶しとさえ感じていたが、目の前で年相応に笑っている彼女の姿を見て、気付かされた





思えば彼女が親しい人間の前以外であんなに声を張り上げたことなどあったのだろうか





強気で、何事にも突っ走っていく猪突猛進的な性格である美桜が外では不気味なぐらい大人しいということは幼なじみである与一はもちろん知っている





しかし今日の美桜は、周りに大勢の知らない人がいるにも関わらず怒りを露にしたり、子供のようにはしゃいだりなど本来の美桜が前面に現れているのだ





いったい美桜に何があったのかと疑問に思う前に、与一はその原因を突き止めていた





大柄で、非常に威圧的な、大熊のような男、西城大志





どうやらこの男が外面ばかりのよい美桜の本来の姿を引きずり出したということだ





大志が美桜のどこに惹かれたのかはまったくもって謎なのだが、与一が危惧していたことはだいぶ見当違いだったのかと自傷気味に笑うと、目の前の大志と美桜も笑い合っていたので、色々散々な日だったが、なんだかどうでもいいやと思ったのであった






*
*






「ということで、今回は僕の負けだったから、約束通りお前たちにはもう何も言わない」






散々対戦した挙句、結局は惨敗だった与一が腰に手を当て、偉そうにそう告げると、美桜は気まずそうに目を伏せた






「あの、与一…。先ほどは頭に血が上っていて、正常な判断が出来なかったこともあるのだけど…。わたしと大志様の婚約は正式なもので、全く関係のないあなたがとやかく言っても何か変わることはないと思うのだけど…」





「うぐっ…。あぁー、もう!!お前は本当にいちいちうるさい女だな!!」






最後の最後まで恰好がつけられなかった与一は逃げるようにして大志と美桜に背を向ける






「ちょっと、あなたここからどうやって帰るかわかるの?」






その背中に向かって美桜が問いかけるも、与一に『うるさい!!』と一瞬された






< 79 / 115 >

この作品をシェア

pagetop