西城家の花
「家どこら辺?もし近かったら途中まで一緒に行こうよ」
「…………………○○町の三丁目あたり」
案外素直に答えたところ、本気で困っていたらしい
住所を聞いたところ、敦司の家とはだいぶ違う方向だが、まぁ徒歩で帰れないところでもないので予定通り、絶賛迷子中の与一を送り届けることにした
道中で何も会話しないもの不自然なので、未だに敦司に警戒している与一に少しばかり気になっていたことを敦司はぶつけてみる
「与一くんってさー、美桜ちゃんのこと好きなの?」
もし美桜のことをなんとも思っていなかったら、彼女を心配してわざわざ大志の視察なんか来るはずがない
だからなんかしらの感情があると思っていたのだけど、与一は心底嫌そうな顔でこちらを見てきたので、どうやら感情といっても負の感情の方だったらしい
「冗談でもそんなこと言うなよ。ほら見ろ、お前が変な事言うから鳥肌になったじゃないか」
腕にできたブツブツを見せつけられ、そこまでかよと敦司は呆れてしまった
確かに美桜と与一の言い争いを見ていると、あれは男と女の喧嘩というよりも、どんぐりの背比べ、姉弟喧嘩みたいではあった
しかし与一はそのあと、口を尖らせながらもボソッと呟いた
「…あいつには、兄が随分迷惑をかけたからな。ムカつく女だけど、迷惑をかけた分、あいつの兄貴分として僕がちゃんと世話してやらないといけないんだ」
どっちかというと与一が弟分で、世話を焼かれている方だし、本人の行動が完全に空回りして、迷惑をかけまくっているということも自覚はしていないらしい
だけどやっぱり悪いやつではないらしい
「もし与一くんがよかったら、またこっちに遊びに来てよ」
「はぁ!?なんでそうなるんだよ!!」
「今日一緒に遊んでて楽しかったから。今度はどっかに出かけたりして」
「ぼ、僕は別に遊んでいたつもりはない!!…けど、もしお前がどうしてもと言うなら、ものすごーく暇なときにちょろっと顔出すぐらいなら構わんぞ」
本当に天邪鬼だけど、扱いやすい子だなと思いながら、これからきっと敦司たちの高校の校門が騒がしくなるのだなぁと今から楽しみになった
そして案の定、敦司が想像した通り、たびたび校門の前で大志を訪れに来た美桜と、仕方ないから来てやったぞと、したり顔の与一の口論が繰り広げられることになった