西城家の花
首をぶんぶんと横に振りながら、頑なに顔を上げようとしない美桜に大志がため息をつくと、美桜は泣きたくなってきた
本当に自分が不甲斐なくてたまらなかった、美桜が勉強不足なせいで大志に呆れられてしまうと頑張って顔を上げようとするのだが、視界に大志の露わになった筋肉が捉えると、すぐに怯んでしまう
遠目からうっとりと眺めることは可能なのだが、ここまで至近距離で、しかも大志本人に見られている状態は非常に心臓に悪いのである
しかし美桜のこの態度が大志を不快にさせていると、それは本当に、非常に申し訳ない
「あの、大志様。も、申し訳…」
「もし、俺に迷惑がかかるという理由で顔を上げられないのなら、心配する必要はない」
「えっ…」
謝罪しようとするも、大志から思いもよらないことを言われ、美桜はその言葉を言いそびれてしまった
「美桜が男の体に慣れていないことは十分に理解している。しかし、それでは困るのだ。俺たちは何れ夫婦になるのだから、慣れてもらわなければ、肌を合わせることも叶わない」
「あ、あの…」
大志の言っていることはご尤もなのだが、いきなり閨事のことが出てきたので、美桜の頭はまったくついていけず、既に爆発寸前であった
そりゃあ二人は夫婦になるのだから、いつかそんな行為を行うのだが、まさかこんな場面で突如そんなことを切り出してくるとは思わなかった
さっきとは違う種類の羞恥が美桜の身を襲い、これはいったいなんの拷問だと今度こそ泣き出しそうになったとき、頭上から大志が笑った気配を感じ取った
「だから、迷惑になるなど考えず、思う存分気絶するがいい」
「……………よ、よろしいのですか?」
信じられない言葉を耳にした美桜は、未だに羞恥で熱い頬を抑えながら、出来るだけ大志の筋肉を視界に入れないようにそろそろーっと顔を上げる