西城家の花
数分後、流水の屋敷との連絡を終えた聖が部屋に戻ると、赤くなった美桜を抱える大志と大志から美桜を引き剝がそうとする満の姉弟喧嘩がそこで繰り広げられていた
「いい加減にしなさいー!!美桜様の意識が朦朧としているでしょうが!!いちゃつくのは結構ですが、せめて刺激を和らげるために服を、着なさい!!」
「姉上の心配には及びません。美桜には少しでも早く男の体に慣れていただければなりませんから」
「慣らして何をするつもりですか!!それにしたってもう少し違う方法があるでしょうが、あなたはいつも突飛すぎるのです!!」
姉弟二人の喧嘩に割って入って止めることが出来ず、オロオロしている西城の使用人たちは助けを求めるように二人の母である聖に視線を向けたのだが、聖はあらあらとのんびりと笑っていた
「本当に、仲がよろしいのですね」
遺伝的に大志に受け継がれた聖特有ののんびりとした雰囲気を醸し出しながら、聖はちょこんと部屋の隅に座り、事の行く末を見守ることにした
そんな聖にため息をつきたくなったが、いつものことなのでもう慣れてしまった使用人たちは出来るだけ被害が大きくならぬように細心の注意を払いながら、聖とともにすっかり見慣れた姉弟喧嘩プラス美桜を見物することとなった
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満と大志の姉弟喧嘩は結局、いつものように大志が満に根負けし、渋々と満が持ってきた上着を羽織ることとなった
そもそも上着を羽織るか羽織らないかというくだらないことで何故二人が喧嘩をしていたのか、彼らの喧嘩を見物していた使用人たちは今さらながら疑問を持った
まぁ大方は未だに大志に抱えられている少女が原因なのであろう、さっきまで真っ赤になって震えていたのに、大志が上着を羽織ると、嬉しそうににこにこと笑って、大志に体を寄せている
やっとこさ騒ぎが収まると、聖が部屋の隅からのんびりと三人の元へと移動した
「流水と連絡がついたのですが、天気があまりよろしくないらしく当分迎えには来られないらしいです」
先ほどの騒動がなかったかのようにそう切り出した聖に、美桜は嬉しそうに声を上げた
「それでは、今日は流水のお屋敷に帰らなくてもよろしいと?」
もしそうだったら、一日中大志といられると期待で胸を躍らせていたのだが、聖は美桜の期待を裏切るように首を振った