西城家の花
「いいえ、今日中に絶対に迎えをよこすらしいので、首を長くして待っていなさいと悦子様から申し付けられております」
「うっ……」
確実に忠告を聞かなかったことに対するお説教をさせられると悟った美桜の肩はしゅんとうな垂れる
といことは大志とこうやって密着できるのも、あと僅かなのかと美桜は人目も気にせずギュッと大志の上着を掴み、たくましい胸に頬ずりをする
その光景を間近で見ていた聖はまるで子猫さんのようねと微笑ましくなっていたのだが、満は弟とその婚約者の少女のいちゃいちゃぶりになんだか複雑な気持ちになっていた
当分流水から迎えが来れないということは、外は相当な大嵐に違いないと察した美桜は自分の頭を撫でている大志にある提案をしてみた
「大志様、わたし、大志様のお部屋を拝見してみたいですわ」
「…特に面白いものはないが、美桜が望むのなら…」
「いいわけないじゃないですか!!」
大好きな大志の普段過ごしている空間に入ってみたいという美桜の願いとそんな彼女の願いを出来るだけ叶えてあげたい大志の想いは満の容赦ない突っ込みによって否定された
「思春期の、しかも将来を誓い合った若い男女が密室で二人っきりなど…何をしでかすつもりですか!?」
「姉上こそ、いったい何を想像しているのですか?美桜はただ純粋に俺の部屋を見学したいと申しただけで、決して姉上が思っているようなことは…」
「あなたは何もわかっていないようね!純粋だからこそ困るのです!!」
大志の言う通り、美桜は決してやましい気持ちで大志の部屋を訪れたいと提案したのではないというのは満だってわかっている
しかし、やましい気持ちが互いにないとしても人目も憚らずいちゃいちゃする世間知らずの二人を密室に仕舞いこんだりなんかしたらそのような間違いがあってもおかしくはない
将来を約束しあったとはいえ、嫁入り前の幼い少女に手を出したりなんかしたら大問題だ