西城家の花







満の許可を得て、やっと大志の部屋に入ることを許された美桜は途中までルンルンとした気分でいたのだが、少しずつ緊張し始め、大志の部屋の前に着いた頃にはカチコチに固まってしまった





思い返してみると、家族以外で異性の部屋に入るのは美桜にとってこれが初めてで、幼なじみの与一の部屋にだって入ったことない美桜は今さらながら自分はなんてことを提案してしまったのだと後悔し始めた





大志が過ごしている空間に入りたい一心で何も考えていなかったのだが、やっとこさ満があそこまで頑なに反論し続けた理由が少しだけわかった気がした






「…入らないのか?」





「あ、いえ!!お、お邪魔します!!」






襖を開けたのに部屋に入ろうとしない美桜を覗き込む大志と目が合い、胸がまだ緊張でバクバク鳴る中、美桜は大志の部屋に一歩、足を踏み入れた





部屋に入り、美桜は思った以上に綺麗な部屋なんだなと物珍しく大志の部屋をぐるりと見渡した





美桜の二人の兄は、体が病弱で、ほとんど引きこもり状態になっているためとにかく部屋を散らかし放題にしている





毎日のように彼らの従者が掃除しているのだが、なにせずっと部屋にいるもんだから掃除しても次から次へと汚していくので、永遠に部屋が片付くことはない





だから美桜は兄たちほどではないが、大志の部屋も多少散らかっているのだろうなぁっと想像していたのだけど、それは見事に裏切られる





ベット、机、洋服ダンスと本棚、必要最低限の家具しか常備されていない簡易的な部屋





しかし、ところどころに筋トレグッズや、何かの大会の優勝トロフィーなど大志らしいものが置かれていて、美桜は自分が大志の部屋にいることを実感した





それに息を吸うたびに、畳の匂いと一緒に香ってくる大志独特の匂いが美桜の胸をいっぱいいっぱいにさせる





幸せいっぱい夢心地で部屋の中心でボーっと突っ立ていると大志が座るように勧めてきたので、美桜は言われるがままその場で正座をした





大志も美桜の前に座ると、二人の間に沈黙が流れる






< 96 / 115 >

この作品をシェア

pagetop