溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 システムの概要とマシンルームの使用ルールなどを説明して新條が田辺さんに尋ねる。

「何か質問はある?」

 田辺さんは少し首を傾げて「うーん」と小さく唸った後、キラキラした目で提案してきた。

「あの、ヘンナメディカル人事給与システム保守チームってチーム名は長すぎるから、フルーツバスケットチームと呼んでいいですか?」

 他の三人の目が点になる。天然ちゃんというより、不思議ちゃん?
 少しして、野口くんが怪訝な表情で問いかけた。

「なにゆえフルーツバスケット?」

 田辺さんはニコニコしながらメンバーを指さして説明する。

「だって、宮村さんがカリンで私があんずでしょ? 野口さんは北斗でリンゴだし、新條さんは貴陽(きよう)でスモモの王様です。みんなフルーツじゃないですか」
「そう……。フルーツに詳しいのね」

 花梨が笑顔をひきつらせながら相槌を打つと、田辺さんは益々ニコニコして頷いた。

「はい。私、フルーツ大好きなんです」

 そして身を乗り出して新條に力説する。

「貴陽って本当にスモモの王様なんですよ。大きくて甘くてすごくおいしくて、私大好きです」

 おっと、これはもしや新條へのアピール?
 教育期間中社内にいなかった新人の田辺さんが彼の噂を知るわけはないから、見た目にやられたんだろうな。
 花梨が内心苦笑していると、新條はいつものごとく表情も変えずに冷たくあしらう。

「そう。チーム名は別に絶対じゃないから、君がそう呼びたいなら好きに呼んでかまわないよ」

 ホント女子にはそっけない。田辺さんがどう反応するのか、花梨が密かに窺っていると、野口くんの方が反応した。

「じゃあ、オレもフルーツバスケットチームにしようっと。うっかりお客様に聞かれてもポンコツシステム保守チームより断然いいし」
「そうですね」


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