溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
見ていたドラマがちょうど終わったので、花梨は席を立った。チラリと新條の様子を窺う。特にこちらの動きを気にしている様子もなく、寝そべったまま本を読んでいる。
こちらが好きにしているので、新條にも好きな格好で好きにしていていいと言ったら、部屋着まで持参した。Tシャツにスウェットというものすごくラフな格好なのに、新條が着ているとおしゃれに見えるのが不思議だ。イケメン恐るべし。
キッチンで紅茶を淹れて部屋に戻る。ふたつのマグカップの内ひとつを新條の鼻先に突き出した。
「はい」
「あ、ありがとう」
新條は体を起こしてベッドの縁に腰掛ける。そしてマグカップを受け取った。
「オレのおもてなしなんてしなくていいのに」
「まぁ、ついでだから」
花梨も人ひとり分くらいの距離を置いて隣に腰掛ける。羽織ったシャツのすそでカップを包みながら両手で支えて鼻先に近づけた。温かい湯気に香る紅茶の香りを吸い込む。そのままカップの中を眺めている花梨の横で、新條は黙ったまま紅茶をすすっていた。
突然、新條がクスリと笑う。何事かと視線を向けると、目があった。
「猫舌なのに熱いお茶淹れたの?」
「だってまだ麦茶とか冷やしてないし。って、知ってたの?」
「ん? 猫舌のこと?」
確かに花梨は猫舌だが、他人に言うと食べるのが下手なお子ちゃま呼ばわりされて不愉快なので公表はしていない。
「一緒に食べに行ったとき、熱いものを執拗なほどフーフーしたり、しばらく手を付けなかったりするから、そうなのかなって」
するどい。よく見ている。でもそれに反して、自分は新條のことをあまりわかっていない気がした。
自分の秘密だけ知られているのはなんだか悔しくて、新條のことを知りたい欲求が湧いてきた。
たとえば——。