溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
4.パーソナルスペース
いったいなんの罰ゲームなんだろう。同じ部屋に他人がいるのがイヤだと言ったのに同居しようだなんて。
「どうしてそういうことになっちゃうの?」
「花梨はひとりの時間を確保したいんだよね? でもオレは一緒にいる時間を増やしたいんだよ。オレんちなら余ってる部屋があるから、そこを花梨の部屋にして閉じこもってればひとりになれるよ。毎週オレがここにやって来るより落ち着くと思うけど?」
なるほど、理にかなっている。ていうか、毎週来るつもりだったのかと驚愕する。
確かにそれよりはマシな気もするが、よからぬことしか考えてない奴と同居って別な意味で落ち着かない。
それに家事が増えるのは勘弁願いたい。あのモデルルームのような状態から察するに掃除くらいはしてそうだけど、料理や洗濯は自分でしてないんじゃないだろうか。台所に置いてあった鍋はピカピカだった。
だいたい、このイケメンが洗濯や鍋を洗っている所帯臭い姿など想像もできない。
とりあえずやんわりと牽制してみる。
「私、料理とかろくにできないわよ。ていうか、面倒くさいからあんまりやりたくないの」
本当はそうでもない。残業で遅くなりすぎた時以外は案外作っている。ただ、義務にはしたくない。
花梨の意図が通じたのか、新條はクスリと笑った。
「オレのお世話はしなくていいって。自分のことは自分でするんだよ。同棲や同居じゃなくてルームシェア。花梨のこの部屋がオレんちの中にそのまま入った感じ?」
「それなら、まぁ、いっか……」
気が抜けて、うっかり安堵が口をついて出る。
いやいや、よくない! と思い直した時にはすでに遅かった。新條が嬉しそうに笑いながら肩をポンと叩く。
「じゃあ、善は急げってことで、車取ってくるからそれまでにとりあえずの荷物をまとめといて」
「え、ちょっと待って……」
制止する花梨の声には耳も貸さずに、新條は部屋着のままでさっさと部屋を出ていった。まぁ、イケメンは部屋着でもかっこいいからかまわないんだろうけど。
なんだか新條のいいように誘導されている。とりあえずの荷物って一泊二日の旅行荷物みたいな感じでいいんだろうか。
花梨はすっかり冷え切った紅茶を一気に飲み干して大きくため息をついた。