溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 車で荷物ごと花梨を自宅に連れ込んで、新條はどこかに出かけていった。部屋に引きこもるには必要だろうと、テレビにブルーレイレコーダー、ノートパソコンまで運んで配線までしてくれた。

 ありがたいけど、ある意味人質ならぬ物質をとられたようなものだ。イヤになって自宅に逃げ帰っても、これらがないと暇を持て余してしまう。

 壁に埋め込まれたクローゼットに持ってきた服や荷物を片付けて、元々置いてあったソファに座る。背もたれを倒すと簡易ベッドになるというので、ホッとした。
 いくら起きている間ひとりになれても、一番無防備になる寝ている間に新條と同じベッドだと意味がない。

 ひざにノートパソコンを載せて、教えてもらったWi−Fiのパスワードを入力していると、玄関の開く音がした。新條が帰ってきたらしい。
 足音がそのままキッチンの方へ向かう。なにか食べ物でも買ってきたのだろうか。そう思って、ふとパソコンの時計を見ると、十八時を過ぎていた。

 そろそろ晩ご飯の支度をしなきゃ。とあわててパソコンのフタを閉じる。でもこのモデルルームの冷蔵庫に食材があるとは思えない。となると今から買い物か。そう考えると途端に面倒くさくなってきた。

 今日はもうコンビニ弁当でいいや。そう決めて再びパソコンを開く。ネットの接続を確認がてら、メールをチェックしたりお気に入りのサイト巡りをしたり、気付けば、十九時を回っていた。

 パソコンを落として、財布を持って部屋を出る。新條に声をかけようとリビングダイニングを覗いたら、なにやらいい匂いが立ちこめていた。対面キッチンの窓の向こうから新條が笑顔で声をかける。

「あ、花梨。おなかすいちゃった? もうすぐできるから待ってね」

 って、えぇ!?

「あんた、料理なんてできるの!?」

 花梨はキッチンの窓に駆け寄り身を乗り出して覗き込む。新條が握るピカピカのフライパンの中では、白身魚のムニエルがこんがりとおいしそうに色づいていた。
 新條はムニエルを皿に移しながら不思議そうに首を傾げる。

「そんなに驚くこと? オレ、大学からだから、一人暮らし歴は花梨より長いと思うよ」
「だって一人暮らしの男って外食かコンビニ弁当のイメージなんだもん」
「それ二週間くらいで飽きちゃったんだ。まぁ、最近は休みの日にしかしないから、そんな大した物は作れないけど」


< 19 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop