溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
いやいや、ムニエルは十分に大した物だと思うけど。
ていうか、なに? イケメンで仕事もできて、ちょっと腹黒いけど性格も穏和で、おまけに料理までできるって、どんだけハイスペックなんだと思う。
話している間に櫛形に切ったレモンを添えて、新條はムニエルの載った皿を花梨に差し出した。
「はい。運んでくれる?」
「うん。あ、食費払うから。いくら?」
「いいよ。今日は花梨がうちに来てくれたお祝いだから。あとでケーキもあるよ。駅前のケーキ屋さんのフルーツタルト。花梨好きだよね?」
「うん。ありがとう」
ムニエルの次はトマトとレタスのサラダ、白ご飯に豆腐の味噌汁、キュウリと人参のぬか漬けと次々に渡されて、花梨はそれをせっせと食卓に運ぶ。最後に緑茶の入った湯飲みと箸を渡されて、新條と一緒に食卓に着いた。
和洋折衷の晩御飯を食べながら聞いてみると、ぬか漬けも自家製だという。毎日料理をするわけじゃないから、野菜が余るので漬け物にしているらしい。自分よりよほど女子力高い。
デザートのフルーツタルトを食べ終わって、せめて洗い物くらいはしようと袖をまくってキッチンに入ると、IHコンロの下にある引き出しに新條が皿を詰め込んでいた。
ビルトインタイプの食器洗い乾燥機だよ。実物は初めて見た。
モデルルームのようだと思ったけど、本当にモデルルームのように家電が充実している。コーヒーメーカーもあるし、冷蔵庫なんか観音開きだし。ひとりでそんな大きな冷蔵庫いらないだろうと突っ込みたくなる。ちなみにぬか床は冷蔵庫に入っているらしい。
まだ見たことないけど、おそらく洗濯機も乾燥機付きなのだろう。もしかしてロボット掃除機もいたりして。
これだけ家電が充実していれば家事もそれほど苦にならない。毎週末繰り広げられる自分の原始的な家事を思い出して、花梨は思わずため息がこぼれた。