溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
5.イレギュラー



 新條の部屋に連れ込まれて三週間が過ぎた。家電が充実しているせいか、不便不快を感じることなく案外快適に過ごしている。
 というのも、花梨が一番気にしていたひとりの時間の確保が完璧に成されているからかもしれない。
 新條は花梨が部屋にこもっているときは、ご飯ができた、お風呂が沸いた、と呼びに来る程度で、決して邪魔をしない。

 基本的に自分のことは自分でするルール。ただ、米をといでご飯を仕込むのは花梨の仕事になった。
 料理に関しては、IHコンロの使い方や火加減がよくわからないし、今のところ新條の補佐が必要で、他にひとりでできることがあまりないからだ。

 平日はあまり料理をすることはないが、週末は一緒に作るのが当たり前のようになってしまった。
 お互いに食べたい物を協議して、新條が近所のスーパーへ買い物に行く。会社の近所なのでなるべく一緒に外へは出ないことにしているのだ。
 すかしたイケメンがスーパーで主婦にまざって買い物している姿は想像できなかった。おまけに時々、特売だったからと予定にない食材を買ってきて、急遽メニューが変更になったりする。案外所帯じみている。

 時々教えてもらいながら使うこともあるが、コンロを使うのはもっぱら新條の仕事で、花梨は言われた通りに切ったり混ぜたり盛りつけたりを担当した。
 ひとりでやった方が、絶対手際はいいはずなのに、ふたりでやる方が楽しく感じる。多少の失敗も笑ってすませられた。

 テレビやパソコンを物質に取られているというのもあるが、自宅に逃げ帰ろうという気にもならず、気付けばチョコチョコと荷物を運び込んでいて、あとは大物家具類を残すのみになっている。
 完全に新條の部屋に引っ越すなら、これらの家具家電は必要ない。さっさと処分して引っ越してしまった方が家賃も浮くことはわかっている。けれど、そうするともう逃げ出せなくなるので、踏ん切りがつけられずにいた。

 今週末までに結論を出そう。そう決意して、何度も週末を見送っていた。



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