溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
やがて高級ディナーも最後のデザートを残すのみとなった。運ばれてきたのはコーヒーと果物のタルト。
丸いマドレーヌと同じくらいの小さな丸いタルトは、薄く切られた黄金色の果物が丸く表面を覆っている。洋なしにしては色が濃いし、黄桃にしては色が薄い。
果物の正体が気になって、花梨はフォークの先で果物だけをすくって口に入れた。
少し繊維は多いけど、とろけるように柔らかくジューシーで、おまけに蜜のように甘い。後味に少し爽やかな酸味があった。
結局正体はわからなかったが、未知のおいしさに花梨は思わず声を上げた。
「なにこれ! すごくおいしい。新種の桃の仲間かなんか?」
新條は嬉しそうに笑いながら自分を指さした。
「オレだよ」
「は?」
「貴陽(きよう)。野球ボールくらいある大きなスモモだよ」
「あぁ、田辺さんが言ってた……。へぇ。絶賛するわけだ。確かにおいしい」
花梨はニコニコしながら再びスモモのタルトを食べ始めた。それを眺めながら新條も嬉しそうにニコニコ笑う。
「気に入ってもらえてよかった。これだけはわがまま言って特別に作ってもらったから。本当はもう少し熟した方がもっと甘くてジューシーなんだけど、柔らかすぎて調理には向かないからね」
「へぇ。元々知ってたの?」
「自分の名前と一緒だからね。目に付いたら興味を引くよ」
「そっか」
自分の名前でも花梨はカリンがどんな果物か知らない。のど飴に入ってたっけ? くらいしか。「貴陽」なんて珍しい名前だから興味を引くのかもしれないと思った。
メニューにない珍しいデザートを食べ終わって、コーヒーを飲み始めても新條は何も話そうとしない。まさか花梨とゴージャスディナーを食べるのが目的だったとは思えず、さすがにしびれを切らして尋ねた。
「ねぇ、何か話があったんじゃないの?」
「あぁ、そうだったね」
新條は持っていたコーヒーカップをソーサーに戻して、そばに置いていた鞄から何かを取り出した。それを花梨の前に差し出して極上の笑顔と共に言い放つ。
「オレと結婚してほしい」
目の前でふたの開かれたベルベットの小箱には、銀の指輪の上で花梨の誕生石ダイヤモンドが燦然と輝いていた。