溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~



「うわぁ。のぐりん、いい笑顔。絶妙のシャッターチャンスだね」
「これ、先々週に潜在バグの原因を北斗が突き止めた時だ」
「あぁ、金額が二円合わなくなるっていう……。そういえば、すっごい誉めてたよね」

 時々計算結果に誤差が生じるという謎バグだったが、野口くんがその原因を見事に突き止めたのだ。新條がいつものようにまとわりつきながら誉めちぎっていた。誉められているから野口くんも笑顔なのだろう。
 新條は写真を見つめながら渋い顔をする。

「この角度だとパーティションの向こうから撮ったんだろうな」
「え? 隣のチームに内通者がいるの?」
「そうとは限らないけど、犯人は新入社員だと思う」
「犯人って……」

 なんだかおかしな方向に話が転び始めて、花梨は苦笑しながら尋ねた。

「なんでそう思うの?」
「だってゲイの噂自体は五年前からあったし、こんな写真を撮るのはいつだって可能だったのに、叔父のところに流れたのはつい最近だ。部外者は元々入れないんだから、つい最近社内に出入りできるようになった新入社員が怪しい」
「そっか……」

 確かにその可能性は高い。だが、新入社員は花梨たちのいるフロアだけでも十人はいる。もしも写真を撮っている新人がいたとしても、新條に興味を持っている女子は多いので、内通者だと特定するのは難しい気がする。

「田辺さんにそれとなく聞いてみようか? あの子なら、その写真が撮られたとき私の隣にいたからアリバイはあるし」
「いや。実行犯ではないとしても、彼女も容疑者のひとりだ」

 新條はまだ田辺さんを警戒しているのだろうか。彼女が配属になってずいぶん経つ。
 最初は新條にアプローチしているのかとも思ったが、単なる不思議キャラだったようだし、今では新條が女子と距離を置いていることを知って不必要に絡んだりしない。
 そういう配慮も新條には伝わっていないのだろうか。

 女子がうっとうしいのはわかるけど、同じチームで仕事をする仲間をもう少し信用してもいいんじゃないかと思う。


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