溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
ドボドボとお湯の流れる音を聞きながら、花梨は残っていたカクテルをチビチビとようやく飲み干す。席を立って、鞄を入れたクローゼットの扉を開けた。
先ほどドレスを返しに行った時、ついでに売店で買ってきた下着を鞄から取り出す。そこに置いてある寝間着を取ろうとして手が止まった。
ひとりだったら、お風呂のついでに着替えるのだが、新條がいる。それにすぐ寝るわけでもない。
結局、病院の検査着のような薄い寝間着一枚になるのは恥ずかしくて、下着だけ持ってお風呂に向かった。
塗装のようなバッチリメイクを落とし、ジャグジーの泡にブクブクと全身をマッサージされてうっかり眠りそうになる。気力で目を開けて湯から上がる。
下着だけ着替えて元々着ていた服をもう一度着てお風呂を出た。
先ほどの部屋に戻ってみると、新條がバスローブ姿でソファに座っていた。難しい顔をして足を組み、ブランデーグラスを傾けながら、中の液体をくるくると回している。
花梨が呆然と立ち尽くしているのを見て、新條はいたずらっぽく笑った。
「うけた?」
「……なにやってんの」
「昔の外国映画に出てくるジゴロ的な?」
どうやらハイになるくらいに酔っているらしい。大きくため息をついて、花梨は新條の前に座る。すると新條が意外そうに問いかけた。
「あれ? 寝間着に着替えなかったの?」
「だって、会議するんでしょ?」
よからぬことしか考えてない人の前で薄着になりたくない。とは言わずにおく。途端に新條は不服そうに眉を寄せた。
「そうだけど。てか、なんでそっちに座るんだよ。恋人だろ? こっち来て」
「はいはい。私もビール飲んでいい?」
「どうぞ」
ゴージャスとおしゃれに満腹していつもの味が恋しくなった花梨は席を立って冷蔵庫に向かう。ビールは見慣れた国産缶ビールが入っていてホッとした。ドイツとアメリカのもあったけど。