溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
缶ビールを持って新條の隣に座る。距離感に満足したのか、新條はニコニコしながらブランデーグラスをこちらに突き出した。
「じゃあ、何はともあれ乾杯」
グラスと缶の縁を合わせて乾杯する。ビールを一口飲んで花梨は尋ねた。
「で、お見合い対策だけど、なにか名案はある?」
「考え中。でもまずは相手のこと何も知らないから、兄貴に問い合わせてみたんだ。今は返信待ち」
「あぁ、それでさっきスマホいじってたのね」
花梨が納得して頷いていると、新條は不思議そうに目を見張る。
「え? あれは違うよ」
「違うの? そういえば、よくスマホいじってるけど何してるの? ゲームとか?」
「いや、株」
思いも寄らない返事に花梨は思わず大声を上げる。
「株なんかやってるの!?」
「時々ね。兄貴がやってて教えてもらったんだ。一回大当たりして今のマンション買ったんだよ」
「そうだったんだ」
てっきり親の持ち物だと思っていた。それを見透かしたように、新條はクスリと笑う。
「親に買ってもらったと思ってた?」
「……う、うん」
「うちの親、そういうとこ案外甘やかしてくれないんだよね。自由にはさせてくれるけど」
なるほど、それで案外所帯じみているのか。そういえば学生時代から自炊していたらしいし。
金の苦労を知らないお坊ちゃんだと勝手に思いこんでいたことをちょっと申し訳なく思う。
花梨が内心後ろめたく思っていると、新條が首筋に顔を近づけてきた。
「お風呂上がりの花梨っていい匂い」
「ちょっ! よからぬこと考えてるんじゃないでしょうね?」
首筋に触れた吐息にビクリと肩が無意識に跳ねる。咄嗟に身を退こうとしたら、背中に回された腕に肩を引き寄せられた。
「だから、よからぬことしか考えてないって」
「会議中でしょ!」
「今は報告待ちで、ある意味休憩中だし」