溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
新條が不服そうに尋ねる。
「そのまま寝るの?」
「着替えるけど、一緒には寝ない」
今度は少し寂しそうに尋ねる。
「どうして?」
その表情に罪悪感を煽られて、花梨は吐き捨てるように白状した。
「私が流されそうになるから」
途端に新條は嬉しそうに笑って花梨を抱きしめた。なんか、かわいい。
「流されてもいいのに」
耳元で囁かれて、舌の根も乾かないうちに流されそうになるけど、ここは心を鬼にして。
「ダメ」
「どうして? オレの気持ち知ってるだろ?」
「けじめの問題よ。問題が解決したら、ちゃんと返事するから」
「花梨はまじめだなぁ」
クスリと笑って新條は花梨を解放する。そして頬に軽く口づけた。
「でも、そういうブレないとこが好きなんだ。おやすみ」
そう言って新條は、隣にある寝室の前を素通りして奥に進む。
「こっちで寝ないの?」
「大きいベッドは花梨に譲るよ。いつもソファーベッドで窮屈な思いしてるだろうから、今日は思い切り体を伸ばしてゆっくり寝て」
「うん。ありがとう。おやすみ」
奥にある寝室に新條が入るのを見届けて、花梨も隣の寝室に入った。
寝間着に着替えてフカフカな大きなベッドに身を沈める。酔いも手伝って花梨はすぐに眠りに落ちていた。
ふと違和感を覚えて目を開く。花梨は覚えのあるたくましい腕に背中から抱きしめられていることに気付いた。腕の主は新條だろう。
いつの間に潜り込んだのか。すっかり熟睡していて、不覚にも気付かなかった。
あたりはまだ真っ暗だ。起きるにはまだ早い。そう思った途端に眠気が襲ってきた。
腕を解こうと思ったが、わざわざ文字通り寝た子を起こして、自ら火に飛び込む必要もないのでそのままにする。
後ろから聞こえる静かな寝息と背中に感じる温かさに安心して、花梨は再び眠りについた。