溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
昼休みになり、いつもはお弁当を持参している田辺さんが今日はお弁当がないというので、花梨は一緒にランチに出かけた。
会社で誰かと一緒にランチに出かけるのは、実は初めてだったりする。しかも女子と。
休憩中に他の女子と顔を合わせたくないので、花梨はいつもひとりで外にでかけていた。同じ理由で給湯室も更衣室も基本的に利用しない。
夜は女子社員も減っているので、新條と飲みに行ったりするのも平気だが、昼は全員いるので目立ちすぎる。誘われたことはあるけど、いつも断っていた。
田辺さんと一緒に会社近所のイタリアンレストランに入る。それぞれパスタのランチセットを頼んで、花梨は田辺さんに尋ねた。
「ごめんね。このところ時差出勤で朝いなくて。困ったこととかない?」
「大丈夫です。朝は花梨さんがいなくてもできることを優先してますから。どうしてもわからないことは北斗さんが教えてくれますし」
「そっか。よかった」
どうやら野口くんがうまくフォローしてくれているようだ。
ホッとしながら、ふと新條が田辺さんに不信感を抱いていることを思い出した。彼女はいつから新條を知っていたのだろう。
「ねぇ、聞いていい? あんずちゃんは新條のこと好きなの?」
「え?」
きょとんと首を傾げる彼女に、ちょっと唐突すぎたかなと苦笑する。けれどこの様子から察するに、最初はともかく今はなんとも思っていないようだ。
田辺さんはにっこり微笑んで答える。
「前はちょっといいなって思ってました。でも恋愛感情っていうよりアイドルにあこがれるような感じ? 新條さんって目立つから新入社員の間でも大人気の有名人なんですよ」