溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 教育期間中は、どこからともなく情報を仕入れてくる同僚がいて、みんなでキャーキャー盛り上がっていたらしい。ということは、教育期間中に新條のフルネームを知った可能性は十分にある。
 新條と同じ部署に配属が決まり、同僚からは羨ましがられ、本人も舞い上がって不思議キャラが炸裂してしまったようだ。

 田辺さんは苦笑して続ける。

「私、変な子だってよく言われるんですけど、新條さんにもそう思われてしまいましたよね。北斗さんや花梨さんのように信頼されるように頑張ります」

 うーん。やっぱりいい子だ。新條は警戒しているけど、どうしても疑うことはできない。もしもこれが彼女の演技だったとしたら、花梨は本当にちょろい相手だろうけど。


 花梨が田辺さんへの警戒心を放棄したとき、注文のパスタランチがやってきた。花梨がシーフードのクリームソース、田辺さんがナスとズッキーニのトマトソース。

 セットのグリーンサラダをつつきながら今度は田辺さんが尋ねてきた。

「あの、私もひとつ聞いていいですか?」
「なに? 仕事のこと?」
「いえ、個人的な興味なんですけど」

 一旦言葉を切って、田辺さんは迷うように目を逸らす。けれど意を決したように花梨をまっすぐ見つめて一気に吐き出した。

「花梨さんと新條さんってつき合ってるんですか?」
「へ?」

 バレた? そのことばかりに頭が支配され、花梨は間抜けな声を漏らして固まった。田辺さんは気にした風でもなくニコニコしながら続ける。

「昨日フィルマモンホテルのラウンジで見かけたんです」

 あの変身を見抜くとは恐るべし。まさかあの高級ホテルに顔見知りがいるとは。

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