溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
確かに会社帰りに立ち寄る夕食にしては豪勢すぎる。なんかうまい言い訳はないものかと花梨の頭はフル回転する。
そして賭けに負けた新條が罰として高級ホテルディナーを奢ることになったということに落ち着いた。さて、何の賭けだ。と考え初めてハタと気づく。
「あんずちゃんこそ、なんであんな高級ホテルにいたの?」
罰ゲームではないだろうが、庶民な花梨の庶民な顔見知りがあんな高級ホテルにいるのは何か事情があるはずだ。
田辺さんはニコニコしながらその事情を明かす。
「毎月一度家族で食事に出かけるんですけど、昨日は父が特別に奮発してくれたんです」
「へぇ。なにかいいことでもあったのかな」
何気なくつぶやいた花梨に、田辺さんは苦笑しながら答える。
「うーん。父にとってはいいことなのか微妙ですけど、私がつき合ってる人を紹介したいって言ったらそうなっちゃって」
なんと! 彼氏いたんだ。まぁ、不思議ちゃんだけど、素直でふわふわしてかわいらしいし。
ちょうどいいし、興味もあるし、そっちに話を逸らしてしまおうと、花梨は身を乗り出して尋ねた。
「彼氏いたんだ。どんな人?」
「えーと……」
田辺さんは少し言い淀んだ後、照れくさそうに笑って言う。
「まだ聞かなかったことにしておいてくださいね。私、北斗さんとつき合ってるんです」
「えぇっ!? のぐりん!? いつから?」
「三日前に告白されて。なのでまだデートもしたことなくて……」