溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
10.最後にしない夜
新條には話してもいいと田辺さんの了承を得たので、家に帰った花梨は夕食の時、さっそく野口くんと田辺さんがつき合っていることを新條に話した。
新條は心底驚いたようで、珍しく目を見張って大きな声を上げた。
「田辺さんが北斗と!? マジ!?」
「うん。本人から聞いたし」
やっぱり驚くよね。でも新條はその後少し考え込んでしまった。
考えている邪魔をするのは忍びないが、花梨にはもうひとつ報告しなければならいことがある。顔色をうかがいながらおずおずと話しかけた。
「あの、それで交換条件ってわけじゃないんだけど、私たちがつき合ってることを話しちゃった」
「ん?」
新條はようやくこちらを向いて、軽い調子で答える。
「あぁ、別にかまわないよ。北斗はすでに知ってるし」
「はぁ!?」
会社の人には内緒にしようという約束だったのに、バラしてしまったことを後ろめたく思っていたのがバカバカしくなってくる。
「なんで勝手にバラすのよ!」
「いや、つき合ってることは言ってないよ。オレが花梨を好きだってことを北斗は知ってたってこと」
「いつから?」
「んー。北斗が配属になって間もない頃?」
ということは、二年くらい前。その間花梨と新條は腐れ縁の友人関係だった。新條の気持ちを知っている野口くんには、新條が哀れに思えていたかもしれない。
「なんでもっと早く教えてくれないのよ」
「え? 別に北斗がオレの気持ち知ってても、あいつ言いふらしたりしないし」
「そうじゃなくて、あんたの気持ちの方」
「は?」
新條は再び心底意外そうに目を見開く。
「確かにはっきりとは言わなかったけど、オレ、めちゃくちゃアピールしてたよ。それを花梨がことごとくスルーしてたんじゃないか」
「だって、あんたと同じ部署だってだけで同期にさえやっかまれてるのに、あんまりかかわりたくなかったのよ」
「うん。それ聞いてあんまり会社で絡むのやめようって思った」