溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
未だ不満が収まらず口をとがらせる花梨に、新條は意地悪く言う。
「あれ? 酔った勢いでオレと一緒に同じベッドで一夜を共にしておきながら朝まで気付かず寝てたの誰だっけ?」
「あれはあんただったから……。ゲイだって思ってたし」
「今度からゲイだって言われても安心しないでね。オレみたいにゲイのフリしてるだけかもしれないし」
「はい。気をつけます」
そうか。フリをしていただけなのか。本質はゲイだけど、花梨だけは別というわけではなかったようだ。そんなに女のにおいがしないのかとちょっとショックだったりしたので安心した。
花梨は素直に頭を下げてふと気付く。怒ってたはずなのに、いつの間にか説教されていた。
恋人契約にしても同居にしても、こんな風にうまく言いくるめられて誘導されている。恐るべし新條マジック。
ちょっと悔しい気もするけど、別に不快ではない。
会社での孤立もなんだかどうでもいいことのように思えてきた。実際にフルーツバスケットチームのメンバーとの関係は良好だし、苦手だったヘンナメディカル岡山支店の藤本さんもあれ以来態度が軟化しているし特に問題はない。
花梨は気を取り直して食事を再開する。
こんな間近で新條と向かい合い、一緒に作った料理を一緒に食べるのは、明日の結果次第でこれが最後かもしれない。
そう考えるとこれまでも何度か作った豚の生姜焼きも、ゆうべの高級ディナーに勝るとも劣らないご馳走に思えた。