溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 夕食後入浴を終えて花梨がリビングに顔を出すと、新條はいつもと変わりなくソファに座って、缶ビールを飲みながらスマホをいじっていた。あまりにもいつもの週末と変わりない様子にちょっと気になって尋ねる。

「お見合い明日だよね? 何時からなの?」
「十一時にフィルマモンホテル」

 それなら深酒しなければ、大丈夫か。
 見合いに二日酔いで行ったら一発で破談になりそうだけど、それは自分の価値も下げることになるだろう。
 おまけに新條のような御曹司は自分の価値だけでなく、親兄弟やその会社の評判も軒並み下げてしまう。
 そんなことは花梨が心配するまでもなく、新條にはわかっているはずだ。これが明日の見合い対策ではないだろう。

 花梨はキッチンに向かいながら新條に断りを入れる。

「私も一本もらうね」
「あ、オレももう一本」

 すかさず背中に声が飛んできた。花梨は冷蔵庫から二本の缶ビールを取り出して新條のいるソファへ行く。

「あんまり飲まない方がいいんじゃないの?」

 一応たしなめながらもビールを渡すと、新條は全く悪びれた様子もなく笑った。

「いやぁ、350一本じゃ物足りないんだよね」
「じゃあ、今度から500にすれば?」

 提案しながら花梨は新條の隣に腰掛ける。それを横目に見ながら、新條は花梨の名案に反論した。

「そう思って500にしたことあるんだけど、やっぱり二本飲んじゃうんだよね」
「意味ないじゃん」

 結局、容量よりも本数が刷り込まれているらしい。習慣とは恐ろしい。


< 64 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop