溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
映画を見終わって持っていたビールも底をつき、ようやく新條は花梨を腕の中から解放した。
新條が片づけてくれるというので、花梨はビールの空き缶を彼に渡してトイレに駆け込む。腕の中に拘束され身動きとれず、おまけに映画もおもしろくて中断したくなくて、言い出せなかったのだ。
トイレから戻ったら、リビングもキッチンも灯りが消えていた。明日は決戦の日だし、もう寝たのだろう。
そう思って花梨も自室に入ろうとしたとき、後ろから腕が伸びてきて抱きしめられた。
「きゃあっ」
すっかり油断していたので、相手が新條だとはわかっていても思わず声が出る。新條は気にした風でもなく耳元で囁いた。
「ねぇ、今夜は一緒に寝ようよ」
「問題が解決するまでは一緒に寝ないって言ったでしょ?」
「わかってるよ。けじめだよね」
「じゃあ、なんで……」
「誓い。的な?」
思いも寄らない理由に、花梨の緊張は一気に緩む。
「なんの誓い?」
「今日を最後にしないという誓い」
「え……」
確かに新條は勝算があるようなことを言っていた。でも経歴とかはわかったけど、相手は会ったこともないお嬢さんだ。万が一ていうか百万が一くらいには一目惚れ、なんてことが絶対ないとはいえない。
そんなことになったら、五年間も気付かず、今もなおお預けを食らわせている花梨よりも、確実に結婚OKな見合い相手の方を選ぶんじゃないだろうか。それを花梨に止める権利はない。