溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
後に残された花梨と新條は顔を見合わせて笑みを交わす。新條が得意げに胸を反らす。
「うまく解決できただろ?」
「うん。のぐりんはあんずちゃんが呼んだの?」
もうひとつ残っていた花梨の疑問に新條が答えた。
「呼んだのは田辺さんのお父さんじゃないかな。オレは北斗に見合いのことを伝えただけ」
破談にしたいなら父親に交渉しろと伝えたらしい。
溺愛する娘に意にそぐわぬ結婚を勧めたくない父親と、先に両親に挨拶までしてつき合い始めたばかりの恋人。ふたりの思いは一致している。
どうやら野口くんは田辺さんのご両親に気に入ってもらえているのだろう。今回の件で結束も高まったのではないだろうか。
新條が花梨の肩をポンと叩いて促した。
「オレたちも昼ご飯食べて帰ろうか。ここのランチ、割とリーズナブルでおいしいんだよ」
「うん」
にっこり頷いた花梨の耳元で新條が囁く。
「帰ったら、ちゃんと答えを聞かせて。デザート期待してるよ」
「え……」
そういえば、すべてが解決したらプロポーズの答を出すことになっていた。
デザートって、花梨お気に入りのフルーツタルトのことではないんだろうな。——と、自分をごまかしてみても、胸の鼓動は早くなっていく。
固まってしまった花梨を華麗にエスコートして、新條は楽しそうにクスクス笑いながらエレベータへ向かった。