溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
肩の上に額を乗せて、新條がしみじみとつぶやく。
「五年だよ。長かった。ようやく手に入れた」
「ごめんね。気づかなくて」
「いいよ。オレのせいで花梨も大変だっただろうし」
「だいたい、あんたゲイだって思ってたし。なんで否定しなかったの?」
「だってアレ、そうなるようにオレが誘導した噂だから」
「は!?」
女子にはニコリともせず氷のような冷たい対応をする新條が、男子には笑顔で気安く接する。
実際にベタベタするのはよほど気を許した男子だけだったのだが、女子との差が際だっていて、最初は誰かがからかい半分にゲイじゃないのかと言ったらしい。新條はこれを利用することにした。
まったく脈のない花梨にもっと近づきたいのに、自分が花梨に近づけば花梨が他の女子から嫌がらせを受けたりするからだ。
御曹司の噂が広がってから、他の女子は益々うるさくなり、花梨からは益々避けられるようになった。
他の女子を一掃し、花梨に近づいても迷惑にならない。ゲイの噂はもってこいだったのだ。
ただ、花梨のガードは緩んだものの関係は友人止まりで、度重なるアピールも完全スルーされ続けた。
「遠回しに言ってもさっぱり通じないから、何度か好きだって直球投げたのにスルーするんだもんなぁ」
「だって、ゲイが女子に言う好きは友情だって思うじゃない」
「花梨がそんなにあの噂信じ込んでるとは思わなかったよ」
軽く嘆息したあと、新條は花梨を抱き上げた。見上げる花梨をいたずらっぽく見つめ返して言う。
「デザートにしようか」
「おなかいっぱいじゃなかったの?」
「花梨は別腹だから。何度でもいける」
「何度でもって……」
「五年分だからね。覚悟して」
そう言って新條は花梨を抱えたまま寝室へ向かった。