恋 ~余命1年ってなんですか?
原部長が私のデスクに来た




「来い」





資料とUSBを持ち会議室へ



「まず、お願いから
しばらく武田オフィスに出向させて下さい」


毎回、式典を手伝ってくれるのは
武田オフィス、今回もお願いした

ただ、私の体力が行ったり来たりに耐えられない

電話やメールより、直に話し合いたい


「その方がはかどるだろうな
あちらは、なんて?」


「なんなら、ずっといてもいいぞっ!って」


「引き抜かれるなよ!」


「はい! 次に質問いいですか?」


「矢野さんのことか?」


「はい 私、入社して15年目になるんです
ですが、矢野さんを知りませんでした
九州ですし、ご静養されてたこともあり
知らなくても当然でしょうが
部長は、矢野さんとは?」


「高校卒業して、この会社に入社
立ち上げ当時からの付き合いだ
矢野さんは、何も知らない俺に仕事や
人づきあい、酒の飲み方、遊びまで
何でも教えてくれた
矢野さんと働いた1年は、濃かった
矢野さんが、最初に病を打ち明けてたのが
俺なんだ
矢野さんには、妹さんしか家族がいなくて
妹さんに、打ち明けられない
とても、悩んでいたよ」





矢野さんと私… 本当、似てる




「武田社長と矢野さんと矢野さんの好きな人
3人は、幼なじみ
それを知っていたから、提案したんだ
記念式典で告白しようって!」


「部長の発案だったんですか!」


「ただ、内部に企画が漏れると
サプライズにならないから
武田社長に実行を任せた
矢野さんのサプライズ凄いだろ!?」


「はい!!とっても素敵です!!」


「矢野さんが、初めて弱音を吐いた
30周年は、出来ないって…
しかも、退職してしまった
だから、川谷を九州に送った
川谷の企画は、人をワクワクさせる
もう一度、やりたいと思って貰いたかった
最後でも… 矢野さんに…」



部長の目が潤んだ



「実は、矢野さんにもサプライズを仕掛けたくて!部長!何か考えててください!」


「は?」


「部長が、矢野さんに教えて貰ったこと
受け継いでいるんだって、安心させて下さい!これは、私ではダメなんです!
部長!期限は、1週間!いいですね!」


「はははっ どっちが上司なんだか…」




会議室を出ると


「藤倉 川谷をしばらく武田オフィスにやる
明日からだ いいな」


「急すぎませんか?」


「川谷も了承済みだ」


「室長すみません
ちょっと立て込んだ仕事頼まれまして」


「わかりました」




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