お前のために俺はいる
由奈の家は静かな住宅街の一軒家。


大きな庭もあって、そこには由奈のお母さんが育てている草花が色とりどり咲いていた。


「じゃあ、また明日な」


「うん!!また明日」


由奈にはまだ小さい弟がいた。


いつも由奈の家の玄関先まで送ると、必ず弟が由奈を待っている。


「お姉ちゃん、おかえり〜」


「由奈、おかえりなさい」


家の中に入っていく由奈を迎える声。


今日も元気な弟とお母さんの声が聞こえてきた。


「ただいま〜」


俺から見れば、由奈の家は絵に描いたような幸せな家族だった。


俺は一人っ子。


親は共働きってやつで帰りも遅かった。


「ただいま、、、」


家に帰っても俺の声に応える家族はいない。


「由奈の家族はいつも賑やかで仲良しだよな」


「ん?ああ、、、まぁ、仲良しだけど、、、私、、、いっぱい心配かけちゃってるからなぁ、、、」


「心配って?」


「あっ、、、うん、、、たいしたことじゃないよ」


いつだったか、由奈はそう言った。


俺はすっかり忘れていた。


あの日、由奈がつぶやくように言った言葉には意味があったんだと、、、


俺は後で思い知ることとなったんだ。
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