薫衣草荘の住人
始まり。











ガラガラっ…








日曜日の住宅街にスーツケースのキャスタ








ーの音が鳴り響く。








「ふぅーっ…ここか。」








白のワンピースが春風になびく。








紫色の外壁がその建物の名前を強調してい








る。








「薫衣草荘(ラベンダー荘)」








(まんまの名前だなぁ…)








その時だった。








「あ。新しい住人の方ですか?」








「あ、はい。」








そこには、大きく膨れ上がったレジ袋を二








つ手に下げた男の人。








「えと、こんにちは。今日からお世話にな








る、夏野 蜜柑です!」








「夏野さんね。僕はココの大家の衣草 薫で








す。」








「あ!大家さんでしたか!よろしくお願いい








たします!」








「あはは!そんなに堅くしないで!」








「す、みませんっ…」








そう言われると、何と言っていいのか分か








らない。








ころも、ぐさ…かおる。








心の中で名前を反復する。








珍しい名前だ。








最も、自分も言えないのだが。








「あ、じゃあ部屋案内するから、そこで待っ








てて!」








「あ、はい。」








その時だった。








強めの風がふいた








と、同時に








春風に乗って、香りがした。








特徴的な、花のような香り。








この香りは、








何?
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