薫衣草荘の住人











私達がやってきたのは、ここらの大学の生








徒がよく訪れるカフェ。








木を基調としたカフェに、衣草さんはぴっ








たりと合っていた。








大学生くらいであろう、他のお客は








衣草さんをみんな見ている。








「やっぱり、こういう所に僕みたいなおじさ








んが来るのは不自然なのかな?」








「いえ…そんな事は、ないと思います。」








だって…








普通に衣草さん、イケメンですよ…








「ここら辺で、いい?」








「はい。」








私達は大きな窓の近くの席に腰掛ける。








あー…








もっと可愛い洋服着てくるべきだったなぁ…








「なに食べる?わー、美味しそうなやつばっ








かだね。夏野さん。」








「あ…そ、そうなんです!」








夏野さん。








みんな私の事を、なっちゃんって呼ぶけれ








ど、








衣草さんだけは、私のことを夏野さん、と








言う。








でも、本当は








「名前で呼んで欲しい…」








「え…?」








「え…え?私、何か言いましたか?」








「名前で呼んで欲しい、って。」








「え!?」








嘘っ!声に出てたのっ!?








「あの、えっと、その…あ、じぇ、ジェノベ








ーゼ、って言ってみてください!」








「え…っと、ジェノベーゼ…?」








「あー、やっぱり衣草さんっぽいです!うん








うん!」








「夏野さん、面白いね。」








「あははーっ!…」








う、うまく誤魔化せた、みた…い?
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