薫衣草荘の住人
次の日になってしまった。
大学に行かなければ行けないから…
でも、私の部屋は二階なので
下に降りるなら、衣草さんの部屋の前を通
らなくてはならない。
だけど、ここでズルズルやる訳にもいかな
いっ!
よし!321で出よう!
私は心の中でカウントする。
3
2
…1!
勢いよく家を飛び出し、
階段に向かった。
しかし
突然、目の前のドアが開いて人が出てくる。
出てきたのは…
「夏野さん…?」
「ひっ!!」
私は思わず、短い悲鳴を上げる。
「衣草さん…っ…すみません!」
よりにもよって、今一番会いたくない人だ。
私は衣草さんを避けて階段を降りようとす
る。
けれど。
体が宙に浮いた。
「きゃっ…っ!!」
気が付いた時にはもう遅かった。
私はバランスを崩して階段から落ちる。
全身に強い衝撃と痛みが走る。
(あれ…起き上がれない…)
どんどん意識が遠のく。
「夏…さんっ!」
(誰か…私の事、呼んだ?)