薫衣草荘の住人
衣草さんはゆっくりと話し始める。
それは、10年前のこと。
その時、衣草さんは16歳。
妹、衣草 紅さん(ころもぐさ べに)は13歳だ
ったという。
紅さんはそれは美しく、中学校でもマドン
ナ的存在だったそう。
そして…
「紅。」
「お兄ちゃん。」
2人は既に恋仲だった。
いわゆる、「近親相姦」。
実の兄妹である2人の関係は、許されないも
のだった。
だから、誰にも秘密の関係は
かなり心の負担が大きいものだった。
そんなある時だった。
「ねぇ、薫。」
「何、母さん。」
「あのねぇ、紅をお見合いさせようと思って
るんだけど…」
「え…」
言葉を失った。
「どうだと思う?」
「…いいんじゃないかな。」
今の僕には、それしか言うことが出来なか
った。