薫衣草荘の住人











午後4時








僕は紅の中学校に着いた。








先生方に許可をもらい、








紅のクラス、四階にある1-3に向かう。








そこには。








「お兄ちゃん、来てくれたんだ。」








「紅!そんなところにいたら、危ないよ!」








紅は窓開け、腰掛けていた。








落ちてしまったら、下はコンクリートなの








でただでは済まない。








「大丈夫。心配しないで。」








「でも…っ!」








「ねぇ!お兄ちゃん。お兄ちゃんは私の事、








愛してる?」








「そりゃ、もちろん。」








「それは妹として?女の子として?」








「それは…」








今、僕がいうべきは…








「兄と、して。妹の紅を愛してるよ。」








「…そう。」








「どうして、そんな事…」








「私は!私はね…」








そう言って、涙を零した。








そして、ある1点に指差しながら








紅は窓から落ちた。








「紅っっ!!!」








僕は窓に駆け寄った。








下を見ると、紅が倒れていた。








頭からは紅色の血が出ている。








僕は後ろを振り返り、紅の指さした方へ向








かった。








そこは紅の席だった。








机の上には小さくたたまれた1枚のノートの








切れ端。








広げると。








《私は、薫を愛していた。》








涙があふれた。








やっぱり、手放すべきではなかった。








僕は紅のために、紅の幸せだろうと思い、








お見合いを勧めた。








それが紅には、どれ程ショックな事だった








だろう。








紅を殺したのは僕だ。








紅は、僕が紅を手放したから








見せしめに、僕の目の前で死んだ。








「あああああああああああああああああああ








あああああああああああ…」








僕は悲鳴のような








叫び声を上げた。
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