薫衣草荘の住人
来たのは、有名なフレンチレストラン。
「はい、俺の奢りね。」
「そんな!申し訳ないです。」
「いいんだよー。その代わりに、いっぱい話
を聞かせてもらうから…薫との関係とかさ、
ね?」
「え…?」
「とりあえず、席に着こうか。」
そう言って案内されたのは、
個室のVIP席。
月人さんって、何者なんだろう…
「この人、何者なんだろう?って思った?」
「え…あ、思い、ました…」
「あははー!んー、なんだろ。親が社長だか
らね。だからと言って、親のスネかじって
生きてるわけじゃないから!」
「あ、はい。」
「だから、ちゃんと自立してIT企業の社長し
てるから。でも、だだっ広い部屋に1人はき
ついからサー。幼馴染みのアパートに転が
り込んだ、って訳。」
「そう、なんですね。」
「紅の話は、聞いた?」
「あ…」
私は黙って頷く。
「…紅はね。俺の許嫁になるはずだったん
だ。」