薫衣草荘の住人
「え…?」








耳を疑った。








月人さんが、紅さんの…








じゃあ、月人さんは2人の関係を…








「薫と紅、付き合ってた事も知ってた。」








「え…」








「蜜柑ちゃん、思った事が顔に出すぎだよ








ー。素直で可愛いね、蜜柑ちゃんって。」








「…」








「あーあ。言葉失っちゃったかー。大丈夫だ








よ。別に俺は紅のことは好きじゃなかっ








た。ただ、紅が死んだのはショックだっ








た。」








「…」








「蜜柑ちゃん、薫のこと好きなんでしょ?」








「え…」








「でも、アイツの所に行っても幸せにはなれ








ない。だってアイツは誰にも心を開こうと








しない。恋をする以前の問題なんだよ。」








「…恋をする以前の問題…」








「ねぇ。蜜柑ちゃん。俺なんかどう?」








「え…?」








「俺なら、蜜柑ちゃんを幸せにできると思う








よ。薫よりも。」








「え…」








「…なーんて。」








「?」








「嘘だよ。確かに、薫は愛がわからない。そ








もそも、愛し方って人それぞれだし。」








「愛し方は、人それぞれ…」








「薫が言ってたよ。『夏野さんに避けられて








る。でも、それは当たり前だ。僕は最低な








人間だから。』って。違うんでしょ?蜜柑








ちゃん、そんな事思ってないよね?」








「思って、ないです!」








「じゃあ。」








そう言って1枚のメモを取り出す。








「ここに薫がいるから。思いついたら即行動








した方がいいよ。」








「月人さん!ありがとうございます!」








「君なら、薫の心の傷を癒してあげられるは








ずだよ。」








私は、紙をもって走り出した。
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