薫衣草荘の住人
ママは死んだ。
パパは葬式にも来なかった。
アタシはその時悟った。
ああ、アタシは捨てられたんだ、と。
親戚はアタシを哀れな娘だと見たが、誰も
引き取ろうとはしなかった。
「チョコ…」
「葵…」
葵をみたら、また涙が溢れた。
「ごめん、チョコ。」
「え…?」
葵は、何かをアタシに差し出した。
手の中には…
「これ…っ!!」
ママの薬だった。
「どうして、葵が…」
「分からない…僕のランドセルに入ってて…」
「…ひどい。」
「チョコ…」
「これがあれば…これがあれば、ママは死な
なかったのにっ!」
「ごめん…なさい…」
「もういい!アンタが誤ったって、ママは帰
ってこない!アタシの前から今すぐいなく
なってよ!」
「!」
葵は、アタシに背を向け走り出した。