薫衣草荘の住人











「んっ…」








あれ、なんでアタシ…家に…?








「バカ千代子。」








「…葵…」








「なんで、まだ熱あんのに大学に来るんだ








よ…」








「…ごめ、ん。」








あ、れ…?








「千代子…!?」








「え…ア、タシ…なんで、泣いてんの…?」








涙が止まらない。








胸の奥が熱い。








「千代子。」








アタシは葵に抱き締められる。








「っ!」








「ごめん、ごめん…嫌なのは分かってる。で








も、3分だけこのままで話を聞いて欲しい…








俺、千代子がずっと好きだ。」








「あ、葵…」








抱き締められる力が強くなった。








「千代子が、俺を許せない事も分かってる。








俺は最低だ。でも、ずっとずっと好きだっ








た。会えなくても、拒絶されても、一緒に








いたかった。抱き締めたかった…」








「葵…」








「俺は、千代子から家族を奪った。その分際








で言えない事だって、分かってる…でも。








千代子を愛してる。」








「!」








すごく、すごく嬉しい。








でも。








「ダメだよ、葵。」








「え…?」








「アタシは、罪のない葵をずっと恨んでた。








それは、ただの八つ当たりで…」








「それは…っ!」








「それにっ!…それに、アタシといたら…葵








に、日が当たらなくなっちゃうよ…葵には、








アタシの隣より、もっと輝いた場所の方が








似合ってる。」








「…千代子は何も分かってない。」








「葵…っ!」








葵は、アタシにキスをする。








「たとえ輝いていなくても、愛する人の隣が








一番の居場所なんだ。もし、千代子が暗が








りにいるのなら、俺が明るいところまで千








代子を引っ張るから…だから、お願い。








側にいて、千代子。








千代子が側にいてくれるなら、一生恨まれ








たままでも構わない…」








「…アタシは、葵をもう恨んでない。ずっと








申し訳なかった…」








「千代子…」








「こんな、アタシで…」








「千代子がいい。」








「っ!!」








「恨まれて、離されないくらいに。一緒にい








たい。」








「アタシも…アタシも!葵が好き!」








さらに涙が溢れた。








「千代子。」








再び、アタシ達はキスをした。
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