薫衣草荘の住人
「っ、はぁはぁ…」
夢…か。
たまにある。
随分と寝覚めの悪い夢だ。
気分が悪い。
壁にかかったカレンダーが目に入る。
「今日も、仕事か…」
そう思いながら、準備を始めた。
今日の仕事は、アニメの挿入歌のレコーデ
ィング。
なんでも、るいの好きなアニメみたいだか
ら、俄然るいのやる気は凄い。
ボクは…
「おーいっ?ろい、大じょーぶかぁ??」
「あ、うん。平気だよ、るい。」
「そーかぁ?でも、このアニメ、お前も好き
だろ?」
「あ、うん…嫌いじゃないかな。」
「だよなー!楽しみだよなー!新曲貰えんの
も、歌わせてもらえるのも!」
「そ、う、だね。」
嘘だ。
ちっとも、嬉しくもない。
早くこの場から消え去りたい。
歌うのは好きだ。
でも、この仕事は
嫌いだ。