薫衣草荘の住人
ガチャン…っ
私は部屋のドアを締め
ドアに背中を向けズルズルと崩れ落ちる。
鼻の奥でくすぶるラベンダーの香りで
頭がおかしくなりそうだ。
『可愛い』
その言葉が耳の奥でエコーする。
その言葉は、多分
私が衣草さんに抱いている感情と違う感情
で言ったのだろう。
ねぇねぇ、衣草さん。
私ね、多分
初めて出会ったときから
きっと
あなたに一目惚れしてたんだと思うの。
だって、今も
あなたの香りや声が
私を優しく包んでいるようだから。