時渡りと桜
「へー、意外」
「……意外?」
「なんかお前って、そういうのしっかりしてそう」
――全然そんなことない。
ずっと悩んでるし、迷ってる。
やりたいことが見つからない。
周りに置いていかれるようで、焦って、からまわって。
"今"だって。
「まだ二年だし、時間はあるよ」
「……」
見つからない。
目標も、理由も。
「……あれ、呼ばれてる。まだ休憩明けには早いのに」
桐生は振動するスマホを手に、立ち上がった。
「俺、先戻るわ」
遠ざかっていく桐生の背中を見つめた。
私は、彼に何かを伝えたかった気がした。
――でも、何を伝えたかったんだろう。