時渡りと桜
忘却
私は家路をを歩きながら考える。
タイムリープしてしまったことを確信した後、気が動転した私は桐生の前から走って逃げた。
後ろから何か呼び掛けられたような気がするが、それすらも耳に入ってこなかった。
とにかく、一人になれる場所で落ち着いて考えたかったのだ。
まず、私が今、置かれている状況。
今日は高校の卒業式。
そして時刻は、卒業式が終わった後だから5時くらい。
家に帰れば、卒業祝いと称したご馳走を母親が用意しているのだろう。
よし、少し冷静になってきたかも。
そして、次になぜ私はタイムリープしてしまったのか。
………………。
分からない。
私は少し、今日のことを思い出していただけだ。
今日に戻りたいと思っていた、ということもない……。
そもそも、過去へ戻りたいと願えば本当に戻れるものなのか?
……いや、そんなファンタジーなことあるはずないでしょ。
まず過去に戻れること自体、ありえない。
――本当に私は、タイムリープしたのか?
未だに信じられない。
「……ふぅ」
気がつくと家の前まで来ていた。
考えるのは一旦やめにしよう。