時渡りと桜








家に帰ると、あの日と何も変わらない景色があった。

もう一ヶ月前のことなので鮮明に覚えていなかったが、家族と話しているうちに、記憶が戻ってくるような感覚におそわれた。

逆に今は、これから先の――"今"から見た未来の、記憶が薄れている気がする。

私は、"この時の私"になろうとしている。

未来の記憶を失い、私はまた、同じ入学式までの一ヶ月間を過ごすことになるのか――。






そんなことを思うと、ふと、先ほど考えていた疑問が頭に浮かんだ。



"なぜ私はタイムリープしたのか?"



この理由を考えなければならないと、強く思った。

根拠はない。

でも、このまま同じ一ヶ月を過ごすわけにはいかない。

私が戻ったのには、なにか理由があるはずだ。







……そう、思うのに全然分からない。

頭の中で、糸が複雑に絡み合ったように、気持ちがぐちゃぐちゃになる。



戻ったことを忘れてしまう前に、早く見つけないと――。












しかし、時間は無情にも過ぎて行く。











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