時渡りと桜
卒業式から、二週間たった。
大学に入学するまでの一ヶ月はとても暇だ。
バイトする以外にやることないし。
たまに友達と遊びに行ったりもするけど、入学や引っ越しの準備で忙しそうだ。
ちなみに私は実家から通える大学に入る。
周りは、一人暮らし願望が強い人が多いみたいだけど、私はそうでもない。
実家暮らしの方がいろいろと楽だ。
――それにしても、暇だ。
ベッドの上に寝転がって、スマホをいじり始めた。
友達にメッセージを返し終えて、なんとなく"友だち"のリストを見ていると、ふと、ある名前が目に留まった。
「たつや……か」
桐生竜也のことだ。
アイツともそういえば交換してたっけ。
あれ、わたし――。
その瞬間、ひどい焦燥感に駆られた。
――私、今まで忘れてた。
大学の入学式の日からタイムリープしたこと……。
戻ってきた理由を考えなければいけなかったのに。
いつの間にか、私は"この時の私"になっていた。
すごく恐ろしくなって、汗が吹き出てくる。
完全に忘れてしまう前に、早く理由を見つけないと……。