澄みわたれ!
話し合いが終わり、曲を詰めていく。

時間が経つにつれて、心配事が増えていくようだった

あと少しで、始まるー・・・

ガラッとドアを開け、副顧問の浜島先生が入ってきた

音が止み、緊張した空気が走る

間が、、、怖い

浜島先生は口を開いた

「あれ、小口先生はまだなん?」

はい。と答えた

小口先生は、顧問の先生で、皆からこぐてぃーという愛称を付けられている

「うーん。そうか。ならまだ職員室においでるんかな」

そう言って大きなスコアを机に置いた

「、、、今更、なんやけどな」

そう言って浜島先生は話し始めた

「オーディション、今やらんでもいいと思うねん」

しずか先輩と私は顔を見合わせた

え?

「いやあ、今日の日の為に頑張ってるから言いづらいんやけど」

言いづらいとか言ってるわりにスラスラと話した

「課題曲を決めてからオーディションした方がいいと思うんよな。今の段階で決めんでいいと私は思う」

オーディション、したい?

と、聞いてきた

この場合、なんといっていいか分からない

何故なら先輩は転校するからだ。

それをまだ先生は知らない

から、こんな事を言っている

課題曲が決まるのは、4月辺りだろう

そのときに先輩は、もう、いない

ということで、今回やらないとなれば、もうピッコロのオーディションはしなくていいのだ

さぁさぁ。

こういう時の決定権は、先輩にある

それは、暗黙の了解というものだった

それに、このオーディションに、ほとんど意味は無い

私が口出しするようなものではなかった

「いや、別に」

しずか先輩はか細く息を吐く

そっちにするんだな、と思って、私も頷いた

「そう。分かった。じゃあ小口先生に言ってくるわ」

そう言って、浜島先生は立ち去った

しずか先輩の方を見る

残念ながら表情の見えない角度だった。

こうしてオーディションという大きなイベントは、あっけなく無くなり、空気が日常に戻る

何かが、引っかかる

待て、よ?

定演はどうするんだ?

定演のピッコロも、オーディションで決めると言っていた

これは、、、

やられた。

しずか先輩は考えたのではないか?

自分が定演までピッコロを吹くには

同情と自分がこれで最後ということでピッコロを吹かせてもらうことを狙って

だとしたならば、乗せられた。

まんまと引っ掛かった

いや、引っ掛かるしかなかったとも言える

先輩と後輩という立場さえも利用し、こういう状況にしたならば

、、、巧妙すぎる

そこまでしてやりたいんだ?

あぁ。脱力したよ、もう。

これで、定演については、私としずか先輩の2人で相談しざるを得ない

つまり、その時点で先輩の方が有利だ

だけど、こっちも譲れない

真の負けられない勝負は、心理戦へと至った

まだ、私達2人には、緊張感がある。

他の人から見れば、オーディションの余韻かと思うだろうが、これは余韻なんかじゃない

これから始まる第2の闘いへの緊張感なんだー・・・
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