澄みわたれ!
家に帰るとメールが届いていた
それは西山 静香からだった
(相談なんやけど)
相談?
どういうことか掴めなくて、シュッと横にスライドさせて開いていた
(なんですか?)
私が聞くと西山 静香は答えた
(ピッコロのことについて、なんよ)
どういうことか、さっぱりだった。
(ピッコロが、どうしたんですか?)
なんだか、嫌な感じがした
なにか、重大なことが、起きると直感していた
(まりちゃんは、吹コンで、ピッチ全部ぴったりにして吹く自信、ていうか気合いはある?)
(全部ぴったりは自信ないですけど、、、)
正直に言った言葉だった
そして、この返答で間違っていないはずだったのだ
(それでは、困るんよ)
は?と思った
なんで、今そんなこと言われるんだろう
やっぱり、なにか、ある
(先生が、アタシにもやってみる?って聞いてきたの)
何かで殴られたような衝撃が走った
頭が真っ白になる
なんで、
先生が?
なにがダメだったの
おかしい
混乱して、正常な判断が出来ない気がした
(それで、なんて言ったんですか?)
文字上では、感情が見えないけど、この時の私の指は、震えていた。
打つことが、怖くて
起こっていることを知るのが、怖くて
(引き受けたよ)
終わった
瞬時に悟った
(先生は、オーディションをさせる気なんだって)
(そうなんですね。)
(なんか、他の先輩にも、ちょっと言われてたから、そこら辺の影響もあるんだと思う。だって、ピッコロって吹奏楽のてっぺんの楽器だから)
追って話された言葉に、更に胸がえぐられた
他の先輩が、言ってるんだ
その言葉は、あまりにも恐ろしいものだった
例えるなら、戦争中の国に挟まれた小さな国のような感じ
味方が、この世にいないんだと感じれるほどに、ショックだった。
(そうですね、分かりました。ご報告ありがとうございました。)
早く会話を終わらせたくて、失礼だけど、まくし立てた。
こうも言葉が平淡なのは無意識の内だった。
最後の一文字を入力して送信すると、自然に涙が溢れてきた。
生あたたかい雫が優しく頬を流れる
頬の曲線にそって丸みを帯びた涙の跡を追うように次の雫がこぼれ落ちた
それはだんだん激しさを増し、顎や服を濡らしていった
悲しさや苦しさ、悔しさ、怒りの混じった感情を、一言で表すことは難しい。
複雑に絡み合って
解けない
それは次々と流れる涙が証明していた