【短編】彼氏はきみだけ。
メッセージにも既読がついているのに、言葉は返ってこない。知らないと言っているくせに、気にしているわたしがいる。
「ねえ菜月(なつき)」
「んー? なに?」
お母さんが痺れを切らしたように口を開いたそのとき───
上から、ガタンッ、バタバタバタッ、と大きな音がして、お母さんと目を合わせたのは一瞬で、「ちょっと見てくる!」と階段を上がる。
両親の寝室やお兄ちゃんの部屋を見ても、変わりはなくて、最後に自分の部屋を見てみれば、そこには。
「……由惟?」
床の上で大の字になる由惟が、いた。
「……なにしてんの」
「怒りに来た」
「は?」
怒りたいのはわたしのほうなのに。
部屋から出ていこうとすると、後ろから由惟が抱きついてきて。
「俺のことより、告白したって奴を優先したのに、俺は怒ってる」
「……え?」
「俺の一番はなっちゃんなのに、なっちゃんの一番は俺じゃないの?」